When The Wind Blows……劇場アニメ『風が吹くとき』主題歌:デヴィッド・ボウイ
日本では1987年に劇場公開された1986年制作のイギリス映画『風が吹くとき』と、主題歌の『When The Wind Blows』のご紹介です。
原作はイギリスの作家、レイモンド・ブリッグズが1982年に発表した絵本でした。
主人公は、年金生活を送ることになったことを機に、イギリスの片田舎へと引っ越した初老の夫婦のジムとヒルダ。
世界情勢は悪化しており、核戦争の危機が迫っていたものの、あまり実感を伴っていませんでした。
ジムは、戦争が近づいていることを知り、政府からの広報にしたがって、シェルターを作り、水を備蓄したり、シェルターの中にいろいろなものを持ち込んで備えます。
そして、戦争が起こり、ラジオからミサイルの着弾までわずか3分であると放送が流れます。
シェルターに逃げ込んだジムとヒルダは、爆風からは生き延びますが、見えない放射線の恐怖は二人を蝕んでいました。
反核映画の中でも特異な位置にある名作です。
ジムは新聞やラジオを通じて社会のことを知るのを日課にしています。
とはいえ、放射能の悪影響などには無知で、政府広報を鵜呑みにし、間違った知識に從って行動してしまいます。
ヒルダは、のんびりとした性格で世界情勢のことは無関心の女性です。
戦争が起こってもこれまでの生活が守られると思っており、ジムが政府広報に從って窓にペンキを塗ると、まず気にするのはカーテンのことだったり、ミサイルがもうすぐ落ちます、という状況で洗い物を取り込もうと庭に出ようとしたり。
そんな夫婦ですので、いざ核の落ちた後の行動も無茶苦茶で、死の灰が降り注ぐ庭でくつろぎ、汚染された雨水を飲用に使います。
爆発による圧倒的な破壊と凄惨な描写はほとんどないものの、放射線に侵され衰弱してく夫婦の姿と、いつか救助がくると信じ続け、ほんの少し前の平穏な時間を求める姿が精神的に来る作品です。
見る人によって、感じ方は違う映画であったかもしれません。
放射能の恐ろしさを描いた作品なのか。
無知の恐ろしさを描いた作品なのか。
極限の状況で互いが互いを支えあい慈しみあう老夫婦のラブストーリーなのか。
正直なところ、彼らの無知を嘆くのは簡単ですが、現実に放射能汚染と直面したら、知識が氾濫している現代であっても、最も効果的な行動を選択するのは難しいでしょう。
作中に出てくる滑稽な政府広報のマニュアルは、同レベルの代物が'50年代の頃からイギリスで実際に配布され、作中で視聴者の失笑を誘う簡易シェルターも実際に書かれていたのだとか。
最後に夫婦は簡易シェルターの中に入り、神への祈りを口にしながら眠りにつき、そして二度と出てくることはありませんでした。
絶望に飲み込まれず希望を持てて逝けただけ、二人は幸せだったのかもしれません。
『風が吹くとき』の主題歌が、デヴィッド・ボウイの歌う『When The Wind Blows』でした。
和訳すればそのまま『風が吹くとき』というタイトルのこの曲はメロディは,爽やかさを感じる良曲です。
しかし、映画を見た後で聞くからか、異様な不安を掻き立てられる曲です。
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