時には昔の話を……映画『紅の豚』主題歌:加藤登紀子
1992年7月に劇場公開された『紅の豚』と、主題歌の『時には昔の話を』のご紹介です。
月刊モデルグラフィックスに連載していた漫画『宮崎駿の雑想ノート』の中の「飛行艇時代」を原案に、宮崎駿監督・スタジオジブリによて制作されました。
宮崎監督の前作の『魔女の宅急便』をいて、当時の劇場用アニメの興行収入の新記録を打ち立てたアニメでした。
カッコイイとはこういうことさ――というキャッチコピーの通り、無頼漢を気取りながら哀愁漂う大人の男の姿を描いたように思います。
当時は自分は小学生で、高校生になってからテレビで見たクチでしたが、もしも小学生のころに見ていたらどのような感想を描いたのか聞いてみたいものです。
舞台は1930年代の、ファシストの台頭が著しいイタリア。
だんだんと息苦しくなる時代が舞台です。
そんな中で交錯する馬鹿な男たちと、真摯に彼らを受け止めようとする女性たちの物語……という感じに自分は受け取っていましたが。
主人公のマルコが豚の容姿になってしまった理由は描かれていません。
ただ、マルコが豚の容姿のままでいるのは、人間社会との隔絶のためではないかと個人的には思いました。
ラストのほうで一瞬だけ人間の容姿に戻ったような描写があるのは、マルコが「人間もまだまだ悪くねぇな」と思ったからなんじゃないか、なんて思っています。
公開から早25年。
何度もテレビ放映されていますが、未だに色あせない名作です。
それなのにあの名台詞を「飛べない豚はただの豚だ」と思っている人のなんと多いことか。
実際には「飛ばない豚は――」なんですが。
主題歌である『時には昔の話を』はヒロイン、ジーナ役を演じた加藤登紀子が1986年に発表した楽曲。
男友達と昔を懐かしむ内容ですが、学生運動に身を投じていた思い出を綴っているようにも聞こえます。
時代に熱いも冷たいもあってたまるか、なんて思ってしまうのは、戦わずに大人になってしまった人間の疚しさでしょうか。
もっとも、学生運動に関わっていた連中が戦っていたなどとは思いたくもないですが。
なんだか話が脱線しそうですが、思想的な立ち位置を考えずに聞けば、名曲だと思います。
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